普段は笑顔のアイスパイロットが、硬い表情でブリッジに上がってきました。「このままでは、海氷で帰路が塞がれる。」

アラスカ州・バロー岬沖は、太平洋からやってくる暖かい海水の通り道なので、例年は夏から秋にかけて海氷なんて見られません。しかし今年は違います。バロー岬沖からロシア海域にかけて東西に海氷の帯 (アイスバンド)が広がっています (図1)。

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我々がバロー岬沖を北上した9月初旬は、まだアイスバンドとバロー沿岸は十分な距離があり、航行に支障はありませんでした。しかし、9月中旬、そろそろ観測を終えバロー岬沖を南下しようと考えていた矢先、突然アイスバンドが風に流されバロー沿岸に迫ろうとしているではありませんか。「このままでは、海氷で帰路が塞がれる。」-アイスパイロットの助言を受け、我々はすべての観測を中止し、急遽バロー岬沖を南下することにしました。ここを通らなければ、日本に帰れません。

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テレビモニターの地図上に海氷の分布がオレンジの点で映し出されます (写真1)。アイスバンドがバロー沿岸にも沖合にも広がっています。「ここしかない」と船長が舵を切りアイスバンドの裂け目を目指します。船はゆっくり裂け目を通り抜けました (写真2)。テレビモニターには船の軌跡が白線で表され、見事に海氷の間をくぐり抜けていく様子が映し出されました。船長、お疲れ様でした。アイスパイロットの Duke、グッド・ジョブ。

JAMSTEC 西野