こんにちは、海洋研究開発機構・北半球寒冷圏プログラム研究員の堀 正岳ともうします。
このたび、海洋研究開発機構と国立極地研などからなる研究チームは、海洋地球研究船「みらい」をつかった北極海における観測航海を行います。そこでこれから1ヶ月半の間、本ブログでは、その観測の様子や、船のうえの生活とはどのようなものなのかについて情報を発信してゆく予定です。
しかしそもそも北極とはどこのことでしょうか? そしてなぜ日本の船がそこに行くのでしょうか?
案外近い「北極圏」
北極というと、すぐに「北極点」のことを連想するかもしれません。
しかし実際のところ、北極はもう少し広い場所のことを指します。具体的には北緯66.5以北を「北極圏」といいますが、ここは夏に一度も日が沈まない白夜が存在する地域だと理解するとよいでしょう。
こうしてみると、アラスカの一部、ロシアの北の沿岸部も北極だということがわかります。直線距離だけでいうなら、北極圏の入り口は日本からみてハワイよりも近い場所なのです。
北極を観測する意味
今回の観測の詳細については今後記事のなかで触れてゆくとして、なぜ北極が重要なのかには明快な答えがあります。
それは、北極が地球温暖化が最も早く進む地球気候の「カナリア」のような存在だということが挙げられます。地球上最も寒い場所の一つが最も早く温暖化する。大気の流れや、海の流れ、氷の動きがなにもかも変わる。
科学者たちはそのことに注目して、北極の気候や、微生物の変化、あるいは海洋内部の構造などを調査しています。
今回の観測も、海洋物理学者、海洋生物学者、海洋化学学者、あるいは気候学者、気象学者がそろって、一丸となって航海にのぞみます。
それではこれから1ヶ月半のあいだ、まだまだ暑い日本へ、多少は涼しい話題をお届けしましょう。旅はいま、始まったのです。
追伸:
今回の観測の様子は、ツイッター上で @arcticjp が実況を行いますので、そちらもフォローしていただければ幸いです。