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洋上の観測には「情報をどのように手に入れるか」という問題がつきまといます。

船の周囲の天候、北極の場合は氷の状況、重要なメールなどのデータを入手できなければ、運行に関するさまざまな決断を下すことが難しくなるのです。

陸上に近ければ無線で連絡することも可能ですが北極航海中、「みらい」は一度も陸上に寄港しませんし、陸がみえるところからも遠くはなれています。

また北極のように高緯度までいくと、通常静止軌道衛星で提供されている Inmarsat
などの通信衛星のサービスは利用できなくなります。船からみて赤道上に存在する衛星は水平線の下に隠れてしまうためです。

そのため我々のチームでは、観測中の通信を支援するためにIridium
(イリジウム)という66個の衛星からつくられた通信網を利用します。本日はこの通信システムのテストを行いました。

今回使用するのは Iridium の提供しているサービスでも最も高速な Iridium Openport
というアンテナです。日本では船舶向けに KDDI がサービスを提供しています。

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こちらが衛星通信に利用するモデムです。自宅で利用するモデムと原理的には変わりません。接続先が衛星であるという違いがあるだけです。

Iridium は 66 個の衛星が低高度で回っていますので、地球上のすべての場所で少なくとも 2,
3個の衛星が通過していることになります。このモデムはその衛星ネットワークに接続し、目的地との通信をリレーします。

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設定は普通の携帯電話と同じように、SIMカードに入っていますので、こちらをモデムに差し込んで利用します。

データ通信と、通話の両方を契約することが可能で、今回はデータプランのなかでも最大容量のものを頼んでいます。

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Iridium モデムの後ろにネットワークケーブルを差し込み、パソコンをつないで通信のテストを行います。

テストは無事に成功! そこそこの通信速度で通信ができることがわかりました。理想値では 128kbps と、昔の ISDN
回線程度になりますが、実際は 64kbps 程度でしたので、一昔前のパソコン通信ほどになります。

北極に滞在中は、このアンテナとモデムが私たちの生命線となります。このブログの記事も、このアンテナを通じて、宇宙を経由してお届けすることになります。