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今日から、今回の航海に参加している研究者や学生にスポットを当てて、一人ひとりがおこなっている研究や興味の対象についてうかがっていきたいと思います。

まず登場いただくのは、国立極地研・総合研究大学院大学所属の学生、佐藤和敏さんです。

佐藤さんは学生とはいえ、過去にも2010年の「みらい」北極航海に乗船しているベテランです。では佐藤さん、よろしくどうぞ!

佐藤さんは何を研究していらっしゃみますか?

北極の海氷減少と連動して、雲、しかも大気の下層に広がっている「下層雲」が変化していることが知られています。私はこの下層雲の変化と熱収支といわれる、大気の熱の出入りについて研究しています。

佐藤さんが北極を研究領域にした理由はなんですか?

まだ雲の研究をすると決める以前、学部4年生の頃に担当教官から「北極にいく船に乗船できる機会があるのだけど乗りますか?」というお話があり、興味が湧いて志願しました。

その後、北極について論文を読んでいく中で雲の研究に興味をもち、2010年の乗船ののち、大学院へ進学して現在の研究を続けています。

雲という研究対象はどのように重要なのですか?

雲、特に北極の雲はいま進行している温暖化によってどのように変化するのかはっきりしたことがわかっていません。コンピュータモデルによる予測はあるものの、それを実証するためにはやはり現場での観測が不可欠です。

特に下層雲の存在は、海氷の後退、その上空の大気の構造などと密接につながっており、北極の温暖化が起こる現場とも言えます。そして北極においては、温暖化における下層の役割が特に重要だと考えられているのです。

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佐藤さんの研究はすでに Geophysical Research Letters という国際的なジャーナルに掲載されている他、2011のArctic Science Summit Week会議、および2012年のIPY国際会議においてポスター賞を受賞するなど、高く評価されています。

「総合研究大学院大学」という耳慣れない大学についても説明しますと、国立極地研という研究所は普通の大学のように「学部生」はもたないものの、大学院からの学生を受け入れており、佐藤さんはその一員というわけです。

「北極にいきたい!」という希望をもっている学生のみなさんは、全国のどんな大学からでも、この国立極地研・総合研究大学院大学を受験して入学することでチャンスがあります(志望されるかたは、ぜひご一報ください)。