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話題が前後しますが、ダッチハーバーから出航する直前に、これから航海のあいだ運用するドップラーレーダーの整備作業が行われました。ここで普段はみることのできないレーダーの中を見学させていただくことができました。

ドップラーレーダーとは、いわゆる「ドップラー効果」を利用して空気の流れの速さを測定する装置です。救急車が近づいてくるときと、過ぎ去ってゆく時では音の高さが変わるあの現象です。

特に気象用ドップラーレーダーは、雲の内部の雨粒子の動きを捉えることで、雲の維持に関係する風の流れを細かく測定することができます。雲はどのようにして成長するのか? 雲の中の対流はどのような動きをしているのかが細かくわかります。P8290009

しかし安定した地上ならともかく、揺れる船の上にドップラーレーダーを搭載するというのはとても高度な技術です。

たとえば上の写真の装置は船の揺れに従ってレーダーのビームの射出方向を適切に調整することで、安定した観測を可能にしてくれます。

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このようなドップラーレーダーを搭載した船がそもそもめずらしいわけですが、「みらい」のように北極圏に向かう船がドップラーレーダーをもっているケースはさらに限られます。

これまでもこのドップラーレーダーを利用して、我々の研究チームでは高緯度における巨大低気圧の構造や成因に迫る、世界に先駆けた仕事をしてきました。

今回の観測でも、このドップラーレーダーが北極の低気圧の正体に切り込んでいきます。