通常のエアロゾンデは、1) 気球をふくらませる、2) 観測機器を設定してとりつける、3) 船の姿勢を気にしつつ放球! というステップを踏みます。

トラブルが起こるタイミングや可能性は多々ありますが、それぞれのステップ自体は簡単ですので慣れれば一人でこなすことだって可能です。

しかし今回挑戦したオゾンゾンデはそうはいきません。大気の微量のオゾンを精度高く観測するために、準備のステップがかかるだけでなく、作らなくてはいけない気球の大きさも一回り大きいのです。その様子を佐藤さんがまとめてくれました。

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オゾンゾンデを放球する

研修や事前準備は行ってきました。しかし、これまで実際の放球経験はなく、今回の航海では解析できるデータの取得が目標です。

ですが、オゾンゾンデ観測で大変なのはセンサー準備だけでなく、放球も一苦労します。

なぜなら、バルーンは通常のゾンデより大きく(6倍!)、自動放球できないため手放球で行う必要があります。また、デッキは風にもあおられる場所でもあり、バルーンの作成作業も大変で多くの人手が必要です。

今回は特殊ゾンデ用に準備したストッパー付きの容器に収納し、そこでバルーンにヘリウムを充填してスタンバイします。

後部操舵室で準備したセンサーを放球10分前にデッキへ持ってきて、バルーンに括り付けたらいよいよ放球体制に入ります。

「はい、じゃあまずはトモ側(後ろ側)!」

この合図で、バルーンを収めている容器のトモ側のストッパーを外します。バルーンは大きいためストッパーはオモテ側とトモ側の2重構造となっており、バルーンの急な飛び出しを防ぐため、1つ1つゆっくり外していきます。

反対側の人が見えないので、合図をくれる人の声だけが頼りです。ここは非常に重要で、船では合図や会話で、トランシーバーや掛け声などを駆使して,お互いがお互いの情報を耳で共有することが重要です!全員体勢で観測に臨んでいるとは、まさにこういう事なのです!

「はい、じゃあオモテ側(前側)!」

オモテ側を外したら、バルーンを持つ係の人はしっかりとバルーンの首をつかんでおきます。バルーンが大きい分、しっかりと押さえてもブルン、ブルンと風の影響も大きくなります。

放球までの数十秒間、バルーンを持っている人は決死の思いの格闘です。

オペレーター「はい、放球して下さい!」

この合図で放球開始!

「じゃあ行きます!放します!」

バルーンが飛んでいき,センサーもそれに引っ張られて飛びます。多くの人が見守る中バルーンは上がっていきました。

ozone2

放球後は通常ゾンデと同様、データが送られてきて,高さごとの分布(プロファイル)がPC画面に表示されます。対流圏で少なかったオゾン濃度は、10km辺りの対流圏界面で多くなり、19km付近でピークとなって、そのさらに上では徐々に下がりました。30km付近でバルーンが破裂して観測終了です。教科書でみるようなオゾンのプロファイルになりました。ひとまず成功と言えそうです。

ですが、放球はいつでも成功するとは限りません。時には十分なデータを取得できず、試行錯誤する必要があります。