洋上のラジオゾンデ観測には、陸上とは違ったさまざまな困難が伴います。船のゆれ、洋上の強い風、他の観測との兼ね合いなどで、観測を行なう研究者にさまざまな判断を迫ります。
その様子を、研究生の竹田くんの迫真のリポートでお届けします。
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ゾンデ観測が始まりました。
ゾンデ観測の作業は、一言で言うならば「バルーンに測器をつけて飛ばすだけ」です。単純な作業ではあるのですが、言うのとやるのでは全然違うと実感しています。
「みらい」は、自動放球装置がついています。膨らませたバルーンを、ボタンひとつで簡単に放球する装置です。はじめは「なんて便利なのだろう!」と思っていました。しかし、実際に行ってみると、作業の多さに驚きました。
外気と同じ条件にするために窓を開け、受信機のスイッチをON!
PCの設定をしながら傍らでバルーンを設置しヘリウムを入れ膨らませている間に、野帳に記録を取り、風の状況を判断しながら、バルーンの膨らみを触ってチェックするも、ちょうどいい膨らみ具合すらわからず、「もっとヘリウム入れて!」「はいっ!」
…そうこうしているうちに、もうこんな時間だ!放球時間間に合わない!ブリッジ(船橋)にトランシーバーで連絡を…測器をバルーンに取り付けて、風の方向を見ながら調節して、
「ブリッジ、こちら放球コンテナです!これから放球開始します!」
「放球、了解しました。」
よし!放球スイッチON! コンテナの外に飛び出して、バルーンがしっかりあがるかを見届けます。オートランチャーが顔を出し、
ウイーン ガコン ドン
ふたが パカッ と開いて
バルーンが風になびかれ フワッ~
空にあがって行く様子を見たとき、心の中で「やった!あがった!!」と嬉しかったです。「こういう風な作業で、気柱を取っているんだよなぁ」とぼんやり考えていると
「竹田君、早くオートランチャー閉まって!」
と、感慨に浸る間もなく急いでコンテナの中に戻り、オートランチャーを戻し、放球の時の気温・湿度・緯度経度…を書き留めて、しばらくプロファイルを確認します。
観測が終了したら、次はすぐに気象庁にできたてホヤホヤのデータを送ります。フロッピーを初めて使って、見慣れない機械を相手に、届くまで送り続けます。よし、これで天気予報に反映されるはずだっ…
ふうぅ、観測終了お疲れさまでした。
と思うのもつかの間、あれ?もう次のゾンデの準備を…
…周りからたくさんの助言をいただきながら、なんとか一連の作業を終えることが出来ました。いろいろな話を聞くと、
「バルーンが途中で割れちゃうこともあるからね」
「センサー異常とかあるとやり直し」
「700hPaまで行かなかったら再放球して」
うわぁぁ。
これを一人でやらなければならないという不安もありますが、周りの方々がとても親身に面倒を見てくれるので、安心してしっかり取り組もうと思います。
再度記載しますが、ゾンデ観測の作業は、一言で言うならば「バルーンに測器をつけて飛ばすだけ」です。単純な作業ではあるのですが、言うのとやるのでは全然違うと実感しています。