日本ではすでに残暑に入っていますが、北極はまだほんの少しだけ夏が続きます。
夏になってもすぐに海氷はとけてしまうわけではなく、海氷面積の最少は遅れてやってきます。ですから、夏の終わりから秋がせまって氷に覆われてしまうこの短い期間だけが、我々科学者が北極海の海を観測できる貴重な時間なのです。
今回の目玉は長期定点観測
今回の観測でも「みらい」は海中の水、大気の動きなど、さまざまな要素を観測します。しかし今回なんといっても目玉なのは、3週間におよぶ定点観測です。
通常は広い海の各点を縦横に駆け巡って面的なデータをとるのが観測船のもっともありがちな使い方ですが、これに対して定点での観測は大気と海洋がこの注目すべき季節にどのように変化するかをじっくりと調べることができます。
たとえば大気観測なら、じっくりと同じ場所で観測した結果をスーパーコンピューターによって計算された結果と比較することで、北極における観測の意義を定量的に求めることが可能です。
海洋観測についても、深さ方向に水温やさまざまな海洋生物学的に重要な物質が時間によって変化する様子が高い解像度で理解できます。
世界的にもめずらしい、こうした観測のようすを現場の研究者のリポートでお届けしたいと思います。