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「みらい」は「海洋地球研究船」という名前の通り、海、そして地球の気候について観測することを目的としています。

一口に「海の観測」といっても、何を調べるのか、専門家でない方にはピンとこないと思います。

研究者たちが海から知りたい情報は水温や塩分濃度、あるいは生物の有無や種類など、多岐にわたります。そのため、「みらい」は計画に基づいたさまざまな地点で CTD を行います。

海の観測の基本、CTDと採水

CTD は Conductivity / Temperature / Depth の頭文字から来ており、海水の塩分、水温、あるいは圧力から深度を測る観測装置です。

上の写真にあるクレーンを使って海の中に沈め、深さ方向の分布をとることができます。これを一箇所ではなく、それこそ何十箇所という海域で行うことで海の面的、あるいは深さにそった構造が明らかになってきます。

また、このとき採水器という装置を利用してそれぞれの深さでの海水を採取することも行います。

採取された海水は船の上で分析され、溶けている二酸化炭素や酸素の濃度、栄養塩の濃度といったデータが得られます。

海の生物を捉える

海洋のデータは上記のような物理化学的なものだけにとどまりません。どのような生物が存在しているかも重要な情報です。

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そこで同様にクレーンで海に沈めたネットなどを利用してプランクトンの採取などが行われます。

目に見えないほど小さいプランクトンですが、海の生態を理解するのにこれほど大切な存在もありません。というのも、プランクトンは多くの生物の食料であり、食物連鎖の底辺を支えているからです。

そのプランクトンの種類や、殻などの形質が近年変化してきているという報告がさまざまにあります。温暖化にともなう海の酸性化がプランクトンに変化を及ぼしている可能性が高まっているのです。それは、これらのプランクトンに依存する魚など、生態系全体の変化をも意味します。

困難な観測を繰り返すことには、こうした重要な基礎データを得るという大きな目的があるのです。

とはいえ、筆者は海洋観測にはあまり詳しくありませんので、このあたりにつきましてはまた日をあらためて海洋観測の専門家に話を伺いたいと思います。