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長い木製の甲板に巨大なクレーンにウィンチ、そしてゴムボート。「みらい」の後部甲板にはなにやらものものしい機材や、作業スペースがあります。

今回の航海では、このスペースはCTD・採水作業だけではなく、係留系の回収に利用されます。

係留系とは、海のなかに重しとともに沈められ、一年単位で放置される観測機器の繋がれた係留具のことです。

海の中の機器を回収すると一口にいいますが、いったいどうやってやるのでしょう?

音響で切り離し、ボートで回収

海の中にある係留系を回収するには、まずその場所を特定する必要があります。GPSで場所はわかりますが、実際にその場所に係留系があるかどうかは、海の中に音波のシグナルを送ることで調べます。

一年ぶりにやってきた音波の信号を受信した係留系のセンサーは、「ここにいるよ」と返事をしますが、返事がない場合は船を操作し、周辺海域で返事が帰ってくるまで探します。

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場所がわかったら、今度は「センサー部分を切り離せ」というシグナルを送ります。この信号を受信した係留系は観測機器の部分を切り離し、浮きによって界面に浮上します。

簡単そうに書きますが、一年間海の中で外れることのない強固な鈎を、シグナル一つ届いた時に確実に外さなくてはいけないのですから、見事なエンジニアリングというべきでしょう。

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こうして浮上した浮きを目印に、ボートで回収しにいきます。これも簡単そうに書きますが、実際は冷たく、荒々しい北極海に身を乗り出しての作業ですから実に危険です。

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回収した浮きと、そこにつながっている係留系のセンサーを回収すれば、作業は完了です。ときとして係留系は非常に長くなりますし、かなりの重量になりますので、これを安全に引き上げるのも注意の要る作業です。

多くの船員の訓練と経験、そして努力によって数多くの係留系が設置、また回収され、重要なデータが蓄積してゆくのです。