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本日の記事は JAMSTEC 研究員の川口さんからの寄稿です。

川口さんは海流の動きや、それを支配するメカニズムの物理的理解について研究をされていますが、机上の理論やコンピュータのモデルだけではなく、実際にブイなどの観測装置を投入して裏付けを行うことで学問として完成していきます。

そのために川口さんは「GPSブイ」という、特殊な浮きを使用しているのですが、このブイ、海洋の流れをとらえるため一つの工夫がされています。

川口さんの解説をどうぞ御覧ください。

海の流れをとらえる

Danmen

9月5日、北極海のカナダ海盆において4基のGPSブイを投下しました。この海域では、近年の地球温暖化や北極海の淡水量の増加に関係して、西向きの海流が年々速くなっている海域です。我々は、この海流が太平洋起源の暖かい水塊を北極海の様々な場所に輸送することで、海氷の分布や海水中のプランクトン群衆など様々な方面に影響を与えるものと考えています。

この海流の挙動を明らかにすべく、我々は海流を南北に横切り、そこで高精度のGPSセンサを搭載した漂流ブイを展開しました。このブイは、位置情報を取得するだけの簡単な設計ですが、深さ50mの冷水層に直径1mの円柱状の風洞を沈めることで、亜表層の海流の動きを正確に捉えることができます(図中、☆の位置)。このブイの挙動を船上から追跡し、海流が蛇行する様子や渦が発生する過程などを調べていきます。

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そう、ふつうブイというと表面の流れにしたがって動いていくものと考えがちですが、この「GPSブイ」は50mの長さのケーブルの先に海流をとらえる仕組みをもっているため、表層ではなくてより深い層の流れに従うわけですね。

そして表面に浮いている部分から、衛星に向かって現在地を送信することで、我々はこのブイを追跡し、海の流れをいながらにして把握することができるのです。

時にはブイが蛇行したり回転しますが、それも海に渦ができているという重要な情報をもたらします。天気の低気圧もそうですが、流れのなかにうまれる渦は、熱や運動量を効率的に運ぶための原動力だからです。

このブイの行き先、航海中になにか追加情報があったらまた川口さんに報告していただくとしましょう。