Clean ctd

今日の記事は乗船研究者の Ana さんからの寄稿になります。

先日から研究ミーティングで海洋研究者が話をされている際に「クリーン」という言葉がよく出てきて、なんのことだろう? 機器の洗浄のことだろうか? と不思議に思っていました。

Ana さんの寄稿によって、これは普通の CTD とは違う、はるかに高精度に物質を測ることができる特別仕様の採水機器なのだということがわかりました。

海の微量物質を追う

この「Clean」CTD は、普通の CTD では機器自身、そして船由来の金属と区別がつかなくなるほどのごく微量の金属を海水から分析するために利用されるものです。

こうした海水の微量金属は植物プランクトンの栄養源になって海の生物生産量に関係している可能性がありますし、または濃縮によって食物連鎖を昇って危険性が増すことも考えられます。また、海水におけるこれらの金属の化学過程は、海洋のメカニズムを追うためのトレーサーの役にも立ちます。

「Clean」CTDの採水に用いられるボトルは水をきれいに採取するために特別に作られています。「Clean」CTDは採水後、船内のラボに持ち込まれ、ほかの船内物質からの汚染を防ぐこれまたクリーンな過程で分析が行われます。この研究は、アラスカ大学フェアバンクス校の Aguilar-Islas 博士と、国際北極研究センター(IARC)の共同研究で行われています。

The “clean” CTD Rosette is used to collect seawater for the analysis of metals found at such small concentrations in seawater, that they are very easy to contaminate with the metals in the regular CTD rosette and on the ship. These metals, known as trace metals because they are found in trace amounts in seawater, are of interest because some are nutrients to phytoplankton and can play a role in ocean productivity, some can be toxic specially at high concentrations and can accumulate up the food chain. Their chemical behavior in seawater is also useful for tracing oceanographic processes.

The bottles on the “clean” CTD are specially design for collecting water cleanly. After the “clean” CTD is brought onboard, the bottles are taken to a laboratory inside the ship, and the water is filtered in a “clean” space to avoid contamination from the ship. This work is done in collaboration with Dr. Aguilar-Islas from the University of Alaska Fairbanks (UAF) and the International Arctic Research Center (IARC).

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科学の対象は目に見えるものばかりではありません。目に見えないプランクトン、菌類、空気に含まれる微粒子、あるいは素粒子、そして海の中のほんの少量の金属。

こうした「目に見えないもの」は、我々がそれと調べるまえは気づくこともなかったものですが、調べてみるとどれもが私達の世界を背後から支えているものなのです。

そしてこれらの微量の物質をとるにたらないものと打ち捨てずに、地道に、念入りに、多くの人の共同作業でとらえ、分析し、情報を発表し、知識として積み上げてゆくこと。

あまり華やかな感じはしないかもしれませんが、科学の現場というのはこうした地道さの問われる場所なのです。